日本の社会を観る その3  軽減税率を含む消費税制を考える

日本の社会を観る その3  軽減税率を含む消費税制を考える

軽減税率の導入を公明党は主張していますが、自民党はあまり積極的でないようです。何が理由なのでしょうか。消費税は物品やサービスの提供にかかる税金です。老人や貧しい人でも生きるために最低限必要な消費はしなければなりません。衣食住の費用や光熱水費、テレビの視聴費や電話代のほか、介護保険、健康保険、地方税などを支払わねばなりません。体が不調なら医療費もかかりますし、移動のための費用もかかります。大都市の人たちはわからないでしょうが、交通手段が限られるため辺鄙な地域では車が必需品です。持てば任意保険や自動車税を支払わねばなりません。低収入の人たちは収入に比べて生きるために最低限必要な費用の割合は大きいのです。

1. 軽減税率の導入に消極的なのは

自民党は軽減税率の導入になぜ消極的なのでしょうか。私なりの理由を挙げてみました。

(1) 財務省が嫌がる
軽減税率を適用した分だけ税収が減ります。当然財務省は乗り気ではありません。政治家は財務省の意向を無視できません。

(2) 経団連などの反対
自民党が多額の献金を受けていると財界の意見を無視できません。

(3) 財務省の手間が大変
物品単位に消費税率を決めるのは大変な作業になります。当然準備に時間がかかり実施が遅れます。

(4) 会計システムやPOS端末機の変更
事業所や店舗などの会計端末器に消費税率データを設定し対応するやプログラムを設定するのも大変な作業になります。このため消費税率を上げる時期もずっと後になる可能性があります。

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2. 西欧の例

日本の消費税に相当するものは付加価値税です。EUでは15%以上の税率が義務づけられており、英国とフランスは20%、ドイツは19%、スウェーデンは25%です。ただし下記のように食にかかわるもの、健康にかかわるもの、新聞雑誌などは税率が軽減されています。

  • 英国では、食料品のほか、医薬品、水道、新聞などは無税です。
  • フランスでは、食料品と書籍は5.5%、医薬品と新聞は2.1%です。
  • ドイツでは、食料品のほか、水道、新聞・雑誌・書籍などは7%です。
  • スウェーデンでは、医薬品が無税のほか、食料品は12%、外食場合も12%、新聞や書籍などは6%です。

3. 日本はどうするか

軽減税率の導入にはどのようなことを考えねばならないのでしょう。

A. 事前に評価する

消費税率を10%に上げる代わりに軽減税率を適用する税制の実施に踏み切るか否かを検討しなければなりません。実施が国家・国民に有益でなければなりません。景気の長期にわたる落ち込みや、8%の場合より税収が落ち込むようでは実施する意味がありません。国の特定の部分(老人所帯や新聞など特定の業種)に過大な影響があってもなりません。このため、実施を決断する前に計算機シミュレーションを含めて綿密な事前評価が必要です。

B. 制度の設計

(1) 軽減税率の大義

税務当局の本音は、経済的弱者ですら消費せざるを得ない物こそ消費税の対象にしたい筈です。しかし現代の主権在民国家ではそこまで踏み込むことはできません。ならば、軽減税率の適用対象を抑え込みたいところですが、販売数の減少を嫌う産業界の要望も無視できません。このために制度設計に先立ち、消費税や軽減税率に関する大義や理論を確立しなければならないでしょう。

(2) 軽減税率の大綱

物品やサービスの一品ごとに消費税率を定めねばなりませんが、制度設計の段階では商品やサービスの大枠ごとに税率を決めることになるでしょう。

下記は主要な項目の例です。

(a) 生きるために不可欠なもの
主食と副食、電気・ガス・水道、灯油代、NHK受信料、電話、家賃など

(b) 医療関係
治療費、薬代、その他

(c) 子供にかかる費用
保育園・幼稚園代、授業料、給食代、塾の月謝
おむつ、ミルク、幼児の衣服類

(d) 最低限の文化的生活
新聞、雑誌、書籍など

(e) その他
例えば主食の米の場合でも、輸入米と国産米の税率を同率にするか否かは官僚だけで決めてよい問題ではなさそうです。

(3) 実施計画

軽減税率の大綱が決まったら、実施に移す計画を立てねばなりません。

(a) 品目ごとの税率の設定
大綱に従って事業者が品目ごとに税率を設定する設定ガイドが必要です。膨大な商品やサービスが対象なのでガイドの作成も大変な仕事です。

(b) 会計システムの変更方法の検討
会計システムや会計端末機への税率データの組み込み方法やソフトウェアの改変方法を検討します。

(c) 実施日程の検討
事業所や店舗の会計システムや会計端末機の新税率への対応能力を勘案して新税率の実施日を決定します。

C. 軽減税率を盛り込んだ新消費税制の実施

わずか一日で消費税率を全国一斉に切り替え可能なら素晴らしいことですが、無理にそうすることもないように思います。例えば、3か月の期間は前後の消費税率の混在を認めるなどの経過処置を認めるべきだと思います。

4. まとめ

軽減税率を適用する場合になすべき項目を洗い出してみました。制度設計も実施計画の作成も、そして全国一斉の実施も、頭脳活動の面でも肉体的活動の面でも大規模な作業を伴います。それを恐れてはなりません。国家として発展するために実施すべきだと思います。成し遂げた経験が国を強くするからです。

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