生き方の知恵 視界の大小で見え方が大きく違う

生き方の知恵 視界の大小で見え方が大きく違う

正しい情報をできるだけ多く集め、それらを正しい方法で分析すれば、状況判断を誤ることは少ないでしょう。もちろん、偏った思想をもつとか、頑なな姿勢なら話は別です。本稿では三つの例について、視界が違えば全く別の風景が見えることを紹介します。

1. 本土決戦の是非

ポツダム宣言を受諾するか否かの議論の中で、ここで戦いをやめたら、今も中国大陸や南洋の島々で戦っている兵たち、最終的な勝利を信じて国に殉じた多くの英霊や民間人に申し訳ない。それらの人たちのために本土決戦をすべきだと陸軍大臣は主張したようです。気持はわかりますが、日本国のために同意できません。

本土決戦で絶対に勝利する確信はあるのでしょうか。大陸でも、太平洋でも、ミッドウェー海戦以後は負け続け、兵も装備も損耗してきた軍隊が、本土での決戦だけは負けないのでしょうか。後に起きた朝鮮戦争でも原爆の使用を考えたともいわれる米軍を相手に戦うのです。勝利が不確かなら本土決戦をすべきではありません。日本が滅びてしまいます。自分たちの指導で多くの兵を死なしめたことを反省し、もうこれ以上は死なせてはならないとする考えは浮かばないのでしょうか。

ソ連に連合国との講和の仲介を頼んだつもりのようです。その仲介の結果を待つという意見もありました。ソ連国が信義を重んじる国だと思っていたのでしょうか。仮に信義を重んじる国であったとしても、連合国を相手に終戦処理と復興について協議(交渉)する場で、日本に有利な条件で講和を仲介できると思ったのでしょうか。甘いと言わざるを得ません。時代がどうであれ、国際政治においては、喰うか食われるかのどちらか一方です。善意だけの国などないのです。

仲介するどころか、ソ連は日露戦争で失った南樺太や千島列島を取り戻し、できれば東欧を得たように、アジアの東端でも領土を拡張したいと思っていたはずです。満州と朝鮮はともかく、北海道を自国領土にしたいと思っていたはずです。

世界大戦終盤の局面、国際政治の現実、米英とソ連のそれぞれの思惑、日本の立場、日本の現状、等々への正しい認識がなければ判断を間違うことになります。

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2. 憲法改正

憲法改正というと、すぐに第9条に結びつけたがる人たちがいます。第9条の改正に賛成の人にも反対の人にも言えます。第9条だけが問題なのでしょうか。70年もの間、より良い憲法へ進化させる努力を怠った国ですから、全面的に、徹底的に、広範囲に、哲学的かつ現実的に検討すべきです。

自由とか平等という語句の定義についても同様です。自由には責任が伴いますし、自由や平等には適用される範囲があるはずです。

A. 現行憲法の分析

(1) 成立時期と時代背景を考慮した見直し

成立時の国際関係、当時の日本の状況などを見直します。

(2) 誰が骨格を作ったか

マッカーサーメモを指導原理とし、GHQの職員のなかから選ばれた人たちが分担して作ったようです。意図したものではないでしょうが、ユダヤ系でやや左翼的な考えの人々が含まれていたようです。

(3) 各条文の前提となる前文の吟味

前文は憲法の各条文の基となるものです。徹底的に分析しなければなりません。

(4) 各条文の相互関係の把握

条文間の親子あるいは前後関係を分析します。

(5) 足りない記述

不足している記述の有無を分析します。

(6) 過剰な記述

不要な記述の有無を検討します。

(7) 日本国憲法にふさわしい日本語表現

GHQの草案を日本語に翻訳したものがもとになっているのですから、自然な日本語表現になってない記述があるかもしれません。

(8) その他

B. 新憲法の検討

全てを新たに作るか、現行憲法を修正するかが問題です。

3. ロッキード事件

この事件は犯罪を扱う検察の水準で見るか、良くも悪くも社会を動かす政治の水準で見るかにより、全く異なる風景が現れます。

A. 事件の概要

1976年7月27日、元首相が逮捕されるという前代未聞の出来事がありました。

米国上院の多国籍企業小委員会(チャーチ委員会)でロッキード社の副会長(コーチャン)が同社の航空機(トライスター)の売り込みのため、多額のお金を日本のさる筋に渡し、その一部が政府高官に渡ったと証言したのです。元首相は受託収賄と外為法違反の罪で起訴されます。

検察は米国でコーチャンらに嘱託尋問をして調書を作ります。コーチャンらに対して、日本は刑事責任を問わないという前代未聞の司法取引をしたのです。元首相は裁判で一貫して無罪を主張したものの、1983年10月12日に東京地裁は懲役4年、追徴金5億円の有罪判決を下します。嘱託尋問で作られた調書は証拠として採用されました。なお、詳細は省きますが、児玉誉士夫はロッキード社の秘密代理人で米国CIAの日本の協力者でもあったようです。なお、元首相の金の受け取りは専属の運転手が証言しています。彼はその後自殺しています。三木首相以下の行政、裁判所、検察、マスコミなどが元首相の金権体質を非難したので、多くの国民も元首相の犯罪を、そうかもねと信じたにちがいありません。

逮捕から丸40年目の年を迎え、この7月27日は逮捕された日でもありました。そのためNHKはロッキード事件を扱った映画を放映し、産経新聞はロッキード事件の特集の記事を掲載しました。

B. 事件の背景

米国は自国の大学につながる人脈を利用して日本の政界、官界に影響力を及ぼします。つまり大学につながる人脈を重視しますから、高等小学校卒の元首相は、人間力のすばらしさ、政治家には稀有な発想力、旺盛な行動力、明晰な頭脳などを備えていても、軽く見られます。換言すれば自分たちの世界の人とではないのです。

(1) 日米首脳会談

元首相を過小評価したのか、日米首脳会談はワシントンでなくハワイで開催されました。会談の詳細は不明です。元首相は台湾との友好関係を断って中華人民共和国に接近すること、ソ連への訪問交渉をすることなどを告げたかもしれません。米側はロッキード社の航空機の購入を働きかけたとの説もありますが、真実は不明です。この頃の米国は経済が悪化し、ニクソンはドルを金と交換することをやめたと宣言せざるをえなくなっています。日本に経済的な譲歩を求めたことは十分考えられます。この会談でもキッシンジャー国務長官は元首相に良い印象をもたなかったようです。

(2) 資源外交

中東戦争の勃発によるオイルショックの直後から積極的な資源外交を展開します。原油入手のための中東諸国と英国への歴訪、天然ガスに関係したソ連の訪問などを精力的に行います。これらは米国の石油メジャーへの一方的な依存からの変更を意味するものでしたから、イスラエル寄りからアラブ寄りへの変更と共に、米国から見たら許しがたいことだったと思います。ユダヤの血が流れるキッシンジャーにとって、元首相は政治的に抹殺すべき人物と思われても不思議ではありません。

(3) ドル以外の通貨による原油取引

イラクのフセイン大統領は原油取引をドル以外の通貨で決済するとして、米国の敵になりました。大量破壊兵器などは単なる口実です。リビアのカダフィ大佐も同様の理由で抹殺されました。米国ドルが基軸通貨の地位を保ち続けるには、原油はドル建てで決済されねばならないのです。

C. 事件が終わって

米国政府の意向を受けて日本に住む米国人がいます。米国留学をしたことで、米国の指導教授などを通じて米国のために動く政治家や官僚がいます。

(1) 諸官庁の検察への協力

元特捜検事の田中森一氏は著書「闇社会の守護神と呼ばれて 反転」の中で、岡山大学の先輩でロッキード事件の主任検事(後に検事総長)を務めた吉永祐介検事が卒業生の集いで言ったことを紹介しています。「特捜部の捜査といっても必ずなにがしかの障害があるもんでね。しかし、ロッキード事件ではそれが一切なかったんだ。それどころか、すべて当時の三木政権や霞が関の官庁が全面的に協力してくれた。捜査の御膳立てまでしてくれたんだから、やりやすかった」・・・と。外務省は米国での嘱託尋問の手配をしてくれたし、国内の捜査でもそれぞれの官庁は積極的に協力してくれたようです。

(2) キッシンジャーが中曽根元首相に話したこと

元首相の逮捕された後に来日したキッシンジャーは、「ロッキード事件は間違いだった。あれはやりすぎだったと思う」と中曽根元首相に話したようです。

(3) 被害者は日本人だけ

上院チャーチ委員会で追及されたコーチャン等は米国で刑事罰をうけることはありませんでした。日本では児玉誉士夫、小佐野賢治、元首相、全日空や丸紅の幹部が有罪になりました。結果だけから見ると、日本の特定の勢力を潰すために為された行動のように見えます。視野を検察や司法の視点より広く、かつ深くするとロッキード事件は全く別の風景に変わるのです。

4. まとめ

事物を扱う場合、視野の広さと深さによって見え方が大きく違うため、扱う内容や方法が違ってきます。視野が狭く、そのうえ浅いのでは簡単な問題しか扱えません。しかし、視野を広め深度を大にするには、知識の習得と思考を積み重ねが不可欠です。重ねたとしても、達成できない人が出てきます。人々を導く人はその責務に応じた視野の広さと深さをもたねばならず、能力を超える問題への取り組みは慎重にしなければなりません。いずれの日か、憲法の変更に関する国民投票があるでしょうが、憲法に関する国民の判断能力を高める努力がまず必要です。

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