「安く買い・高く売る」は政治の世界にも

「安く買い・高く売る」は政治の世界にも

日本が起こした不動産バブルや米国が起こした不動産ローンバブルなどがはじけ、社会に多大な混乱を及ぼしました。人間の活動分野には実物のみを対象とする段階と、実物を仮想化した事物を対象とする段階があります。東京の築地市場と東京証券取引所は代表的な例です。この仮想化には、実物が風水害や地震などの自然現象によってもたらされる不作や、破壊・盗難・戦争などによる損害など、何らかの形で実物と関連する対象と、実物との関連が極めて希薄な対象とがあります。

サブプライムローンと他のローンとを混ぜたローン債権の販売ではリーマン・ブラザーズの経営破たんだけではありません。米国の金融業は大きな負債を抱え、政府資金の注入で表面上の騒動を収集しましたが後遺症は残っているほか、影響は欧州をはじめ世界に及んでいます。わが国でも被害を受けた企業は少なくないでしょう。

仮想化が進むことが進歩とは思いたくはありません。どこかに越えてはならない一線を引くべきです。自由を標榜する欧米、特に米国の行動や主張には限度があるべきです。

仮想化は情報処理の世界でも進展していますが、流通や通商や金融の分野は特にその程度が顕著です。本稿では、通商・流通・販売活動の特性を負の面に注目して分析しみます。

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1. 生産業と流通業

古今東西、社会の生業は事物の生産と、流通交換(売買)が主体です。

  • 農業は特にそうですが、製造業にしても生産拠点の移動は簡単ではありません。他方、交換は生産地で物を購入した人が物と共に移動して消費地で売りさばくか、生産地から消費地へ輸送された物を受け取って販売します。生産物の移動は大前提で、それに伴う危険と多大な利益とが対となった生業です。
  • 他人の製品をそっくり真似た製品を生産する不届きな行為は問題外とすれば、製品の開発・生産には人の工夫や改良の繰り返しと、真摯に生産対象に向き合う姿勢が不可欠です。優れた電子部品や電子機器の生産、米作りにおける土壌や水や肥料への思い入れ、栽培中の毎日の見守りなどは、わが子を育てる以上の思い入れと注意が必要です。
  • 売買では「何」を「どこ」で「いくら」で仕入れ、「どこ」で「いくら」で売るかを判断する能力、安く仕入れて高く売る方策を考える力、人との折衝力が必要です。輸送途中の事故や盗難に備える危機管理能力も必要です。
  • 交換を生業とする者は、社会情勢の変化とその兆候を目ざとく察知し、人の強みや弱みを見抜き、販売で大きな利益を上げる方法を考える能力に秀でていなければなりません。冒険心やリスクに賭ける態度も必要です。行動の基本は正確で多量な情報でしょうか。

2.  安く仕入れて高く売る

安値で仕入れて高値で売れば利益が大きくなることは小学生でもわかりますが、安値で仕入れる能力と高値で売る能力は、小学生はもちろん普通人でも身につけるのは容易ではありません。

(1) 安値で仕入れるにも様々な方法があるでしょう。誰でも思いつくのは大量に購入するとか、定期的な購入を約束するとか、収穫や生産の前に購入の契約をし、前金を支払うことなどです。

(2) 高値での販売にも様々な方法があるでしょう。商品を厳選するとか、付加価値をつけるとか、相手を選ぶとか、時期をずらして販売するとか、供給の少ない地で販売するなどです。悪徳商人のように振舞えば、多量に買い占めるとか、悪質な風評を流すとかという方法もあるでしょう。

(3) 仕入れと販売のセットで高い利益を上げるには、悪知恵と言われるような知識と知恵と、リスクに挑戦する度胸が必要です。

3. 実物の仮想化

実物の仮想化とは、実物ではないが一面では実物の代替となる事物のことです。これには、実物と緊密に関係する仮想化事物と、実物との関係が希薄な仮想化事物とがあり得ます。

A. 実物との関係が濃い仮想化

仮想化の例を幾つか挙げます。

(1) 米(こめ)

「米」自体は実物です。「米の先物」は「仮想化された米」です。米が不作で収穫できない場合に備えた「保険」も一種の仮想化された米かもしれません。当然のことですが、実物の「米」以外は食べられません。

(2) 兌換紙幣

「金 : Gold」を「お金」の実物とするなら、「金」と交換できる「紙幣」は「仮想化されたお金」です。ただし、保有する「金」の量しか「紙幣」を発行できません。資金需要な旺盛な社会では資金不足に陥ります。「金 : Gold」の増産がない限り紙幣を発行できないからです。

B. 実物との関係が薄い仮想化

実物との関係が希薄な仮想化物は、社会活動で交換の割合が高くなるにつれて進むようです。

(1) 不換紙幣

「金」と交換できない「紙幣」は、「金」を「お金」とする仕組みからの仮想化が一段と進んだ「お金」です。保有する「金」の量に関係なく「紙幣」を増刷できます。ただし、「金」と交換できないので、その流通には価値を保証する仕組みが必要です。保証できなければ価値が低下し、最後は紙切れ同然になります。

(2) 約束手形・小切手

約束手形は期日が来れば換金できることを約束した仮想紙幣です。また小切手はいつでも換金できることを保証した仮想紙幣です。換金できるか否かは発行元の信用に依存します。発行元の口座に十分な残高がないと換金できず、紙くず同然になります。

(3) 株式証券

株式証券も仮想債権であり、売買の対象になります。価格は企業の業績により上下しますが、企業とは無関係な社会の変動や思惑でも変動します。株券への配当の受け取りを目的にして保有し続ける株主もいますが、日々の売買で利益を得ることを目的とする株主もいます。

(4) 権利

「何々の権利」も売買の対象になります。石油採掘権、営業権、使用権などの権利が売買の対象になります。

4.  買い叩いて高値で売る例

実は実体の「金」も取引市場があって価格は常に上下しています。また各国が保有する「金」も、実物が各国の「金庫」に収蔵されているとは限りません。戦争があると敗戦国の金塊は勝利者に持ち去られる恐れがあるので、安全なところに保管を依頼する場合があるのです。

A. 株式の空売り

ある会社の株式を有償で借りて意図的に大量に売り出し、株価を安価に導きます。株価が思惑した値段まで下がったところで安く買い戻します。あとは株価の回復を待って大量に売って多大な収益を得ます。なお、企業を潰す目的で空売りする場合もあり得ます。

B. ハゲタカファンド

(1) 事業縮小

バブルの崩壊や放漫経営のため、事業を縮小して再建を図る以外に生き残りの途がない企業があり得ます。残す事業部門以外は売却するのですが、ハゲタカファンドの手にかかると徹底的に安値で買い叩かれます。買い取った債権や資産も適切な投資で利益を生む資源に変身する可能性があるのです。

(2) 倒産

資金繰りがつかずに倒産に追い込まれる企業があり得ます。当該企業に見込みのある事業資産があれば、ハゲタカファンドは最低限の価格で買い取るでしょう。潰すものもあるでしょうが、活かせる資産を活かして大きな利益をあげようとします。

C. 国の支配者や企業経営者

先の支配者を倒して新たな支配者になった者は、先の支配者を事実以上に悪く言います。国家だけでなく企業や自治体でも同様でしょう。

国家の支配者が交代する場合、交代前の支配者を事実以上に悪く言う(安値の買い叩き)ことで自己の正当性(高値の売り抜け)を際立たせます。例えば隋から唐への支配者の交代では、隋の煬帝は悪辣な皇帝にされ、乙己の乱で滅ぼされた蘇我本宗家は、天皇家にとって代わろうとした悪者の汚名を着せられます。

D. 東京都知事と豊洲市場

(1) 小池都知事になってから、豊洲市場の地下構造や汚染水が問題視され、築地市場からの移転は延期され、地下空間の存在を許した責任者のあぶり出しや、豊洲市場への移転を決めた関係者の責任追及が行われています。この動きと平行して、都議会の会派の構成を変更すべく新たな会派の立ち上げの準備が都議会選挙に向けて進められています。

(2) 豊洲市場の現状は、そこに働く仲買業の人々や、仕入業者が販売した魚類を食べる人たちの健康が大いに問題になるほどの状態なのでしょうか。さらに言えば、どんな対処をしても食物を商う場所として認められない危険があるというのでしょうか。この視点の検討は一向になされていません。食の安全を研究する研究者や土木構造物の専門家は何故か黙しています。地下の土壌汚染や構造物に問題がある限り、地上施設の食の安全は議論しても始まらない程に関連するのでしょうか。

(3) 豊洲市場を問題化し、歴代の都知事や副知事や市場長、都の幹部、知事の与党ともいえる自由民主党などの業績や存在をおとしめ(安く買い叩き)、自分と自分が創ろうとする都議会の政治集団の価値を高めようとする(高く売り抜く)政治家の思惑が働いているような気がします。

(4) 小池都知事の言動からは、空売りを繰り返して株価を極限に近い値まで下げ、その後に大量に買い戻し、株価が回復してから高く売り抜く空売り屋の手法が感じられて仕方がありません。石田梅岩に代表される商人道を重視する日本とは異なり、エジプト、ユダヤ、シナイ半島、シリア、メソポタミアなどの諸地域から中央アジア経由の中国までの通商の民、地中海沿岸の通商都市、大航海時代以降のオランダ、ポルトガル、スペイン、イギリスなどの通商国家の貿易商人のやり口を想起したくなります。

5. まとめ

生業には生産と交易が古来より主たるものですが、交易の基本は「安価に仕入れて高価に売る」が基本です。交易での成功はずる賢いと言われそうな知恵と知識と危険に賭ける冒険心が必要です。

本稿では「安価に仕入れて高価に売る」例を、売買の世界と政治の世界について紹介しました。

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