金融のおはなし 中央銀行の組織と人の問題

金融のおはなし 中央銀行の組織と人の問題

どの国にも中央銀行があります。米国は連邦準備銀行、日本は日本銀行、EUは欧州中央銀行(ECB)、英国はイングランド銀行です。本稿では米国の連邦準備銀行と日本銀行について、組織の構成や任務について要点を解説します。常識として役立つことを願っています。

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1.  FRB(The Federal Reserve Board)

  • 世界の主要な国には中央銀行があります。米国の場合は連邦準備銀行が中央銀行です。他国の場合と異なり、⒓の州地区にある連邦準備銀行の集合体が米国連邦準備銀行で、ドル紙幣の発行と公定歩合の管理を担っています。
  • 12の連邦準備銀行は、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、シカゴ、セントルイス、ミネアポリス、カンザスシティ、ダラス、サンフランシスコの各州に位置します。西海岸はサンフランシスコのみです。
  • 連邦準備制度理事会(FRS:Federal Reserve System)がこれらの銀行を統括します。この理事会は議長と副議長を含む7名の理事で構成されますが、その任命は上院の助言と同意を得て大統領が行ないます。任期は14年で再任はなく、2年に1人ずつ退任し、新たな理事に入れ替わるようになっています。
  • FRSの議長と副議長は理事の中から大統領が選任します。任期は4年で再任可能です。
  • 最近の三代の議長はいずれも極めて著名な経済学者です。87年8月から2006年1月まではアラン・グリーンスパン、2006年2月から2014年1月まではベン・バーナンキ、2014年2月からはジャネット・イエレン女史が担当しています。なおイエレン女史の任期は残り僅かで、トランプ大統領が誰を次期議長に任命するかが注目されています。
  • FRSは連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)を定期・不定期に開催して金融政策を決定し、準備銀行はその政策を実施します。
  • FOMCの参加者は、7名のFRSの理事と5名の連邦準備制度銀行の頭取です。5名の連銀総裁はニューヨーク連銀総裁のほか、4名の連銀総裁が交代制で担当します。なお、他の総裁も会議で意見を述べられますが議決権をもちません。
  • ニューヨーク連銀総裁はFRSの副議長であるだけでなく、FOMCの常任委員として主要な役目を果たします。
  • 実は連邦準備銀行はすべて民間企業です。位置する州政府が株式の一部を保有していますが、多くは欧州系の大手金融資本家がもっています。
  • 連邦準備制度理事会は連邦議会の下の政府機関ですが、政策や予算や人事の面で独立した組織です。
  • FRBに関する法案は1911年に全米金融委員会に提出され、共和党と民主党の共同提案の形で可決されました。それを受けて1913年にFRBは設立されました。偶然でしょうか、翌年に第一次世界大戦が勃発しています。
  • 実は連邦準備制度草案の下書きは、メガバンクの代表(ロックフェラー系、ロスチャイルド系、クーン・ロープ商会系など)の会議でまとめられたようです。すなわち、1910年11月に行われた1週間ほどの秘密会議の結果です。場所はジキル島(ジョージア州沿岸)のJ・P・モルガンの別荘です。

2.  日本銀行

日本銀行は日本の中央銀行です。日本銀行はJASDACに上場している資本金1億円の株式会社です。55%の株式は政府の保有です。個人が35.9%、金融機関2.4%、公共団体など0.2%、その他法人6.5%だそうです。他の大口株主の詳細は不明ですが、欧米の金融資本とも言われます。

2.1  株式会社

株式会社ですから政府機関からは独立した組織です。トップの総裁を2名の副総裁が補佐します。総裁、副総裁の任期は5年です。国会の承認を得て内閣が任命しますが、内閣は総裁を解任できません。

2.2  日銀法の変遷

日銀の活動は日銀法で規定されています。1942年に制定されて以来、1949年に最高意思決定機関として政策委員会が追加されましたが、それ以後は何の修正もなく経過しました。

1997年になってようやく大きな改正がなされ、翌年4月1日に施行されました。約55年余も戦時中の法律のまま日銀は活動していたのです。

1994年から「年次改革要望書」が米国政府から政府に届けられるようになりました。これも改正に関係しているかもしれません。日本は金融の面では先進国から遅れていたのです。

2.3  政策委員会

日銀の政策は9名の委員からなる「政策委員会」で決められます。9名のうち3名は日銀総裁と副総裁で、残り6名の審議委員は学識経験者が選ばれます。

なお、政策委員会の会合に2名の政府代表が出席できますが、議決権はありません。

旧法では業界代表方式で、都市銀行代表、地方銀行代表、商工業代表、農業代表として選出されたようですが、新日銀法では、「審議委員は、経済または金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」と書かれているだけです。最近は何故か1名の女性枠がとられ、2名の産業界枠、学者などの有識者枠などに固定されるようです。

2.4  総裁

以前は日銀出身者と大蔵省の出身者が交互に総裁になっていましたが、最近の総裁では、速水優(1998-2003)、福井俊彦(2003-2008)、白河方明(2008-2013)が日銀出身、現在の黒田東彦総裁(2013-現在)は財務省出身です。

2.5  日銀の役目

日銀法の第一条では、「わが国の中央銀行として、銀行券を発行すると共に、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。」とあります。第2条で言う目的は物価の安定で、通貨の価値を保つことです。100円の価値は何年たっても100円のままにすることです。通貨の調整は、銀行との債権の売買を通じて流通する通貨の量を増減させることです。金融の調整は、公定歩合を変化させることですが、日銀に預ける準備預金の割合、すなわち預金準備率を上下させることも含まれます。

以下の項目は日銀の主な仕事です。

  • 日銀券を発行します。ただし硬貨の発行は政府の担当です。
  • 日銀券の流通量を調整することで経済活動を制御します。日本国債の売買のほか、政府から直接国債を買い入れることもあります。
  • 金利の調整を行うことで経済活動を円滑にします。
  • 銀行の銀行として、銀行に資金を貸し出します。
  • 日銀にある各銀行の当座預金により銀行間の決済をします。
  • 国庫収入(税金や年金)の受け入れや支払いを代行します。

3.  国際決済銀行 BIS

  • 国際決済銀行(BIS : Bank for International Settlements)は各国の中央銀行間の決済のための組織で、スイスのバーゼルに設置されています。通貨価値の安定と国際的な金融システムの安定を図る目的で設立されました。
  • BISは各国の中央銀行が出資する株式会社です。日本は設立当初から株主として参加しています。一般企業の株主総会に当たる総会が最高の意思決定機関で、組織の規約の改正や決算の承認などを行います。毎年初夏の頃に開催されますが、臨時総会が開催されることもあります。
  • 議長と19名の理事からなる理事会が運営方針の決定をします。
  • BISの運営のため、「バーゼル銀行監督委員会」があります。中央銀行総裁会議で設立が合意された委員会で、金融監督当局と中央銀行の上席代表が委員になります。委員会はBISの置かれたバーゼルで開催されます。この委員会で合意された事がらは、「バーゼル合意」、あるいは「BIS規制」と言われます。
  • BIS規制とは、国際金融業務を行う銀行の自己資本比率に関する統一基準です。自己資本比率の算出方法とその最低基準値が定められています。
  • 「BIS規制1」は昭和63年(1988)年に同委員会が公表した「自己資本の計測と基準に関する国際的統一化」です。この規制では自己資本比率の最低値は8パーセントです。日本では平成4年度(1992年)末から適用されています。
  • この規制はバブル期に海外で融資活動を展開した日本の銀行を規制するための規制とも言われました。バブルの崩壊した日本では、銀行はこの規制を満たすため、貸し渋りや貸しはがしを強引に進めると共に、不良債権の処理を急いだ結果、外資系投資ファンドの鴨にされたとも言われています。
  • 「バーゼル銀行監督委員会」のほか、「グローバル金融システム委員会」、「支払い決済委員会」、「市場委員会」などの委員会が設置されています。
  • 「バーゼル銀行監督委員会」は、「BIS規制1」に続き、「BIS規制2」「BIS規制3」を公表しています。「BIS規制2」は「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化:改定された枠組み」として公表されたもので、日本では2006年度末より適用されています。「BIS規制3」では普通株式などの安定した自己資産を総リスク資産の7%以上保有することを求めていますが、詳細は省略します。

4.  門外漢の感想

  • 日銀が政府から独立していることの意義、株式会社であることの是非などは、経済、金融、政治の相互関係についての哲学的考慮が必要です。法律、経済、政治に精通した専門家に委ねなければなりません。しかし国民は、日銀が政府の政策から独立した株式会社形式の組織であることは知っているべきでしょう。
  • 政府の無理な要求で、本来あるべき日銀の政策が曲げられてはなりませんが、外国人株主の意向で国益を損なう恐れのある政策がとられることも避けねばなりません。その意味からも大口株主の名前は公開されるべきです。
  • 日銀が政府から独立した組織なら、指導者層は政府の政策に対抗できる金融政策を立案し、機動的に実施する能力を持たねばなりません。一国の経済が上下に大きく振れる状況においては、事態に臨機応変に対処する能力が必要です。
  • 誰も日銀総裁を罷免できないという規定は不自然です。金融政策の実施に失敗したら責任を取るのは当然です。
  • リンカーンは南北戦争の戦費を銀行からの借り入れで賄おうとしましたが、銀行から法外な利息を要求されたそうです。そこで、政府が通貨を発行できる法律を作り、政府紙幣を作って戦費を賄ったそうです。もし国債によっていたら利息を含む元本の返済額は膨大になり、その後の米国の発展の足かせとなったと推定されています。
  • 連邦準備法を成立させ、連邦準備制度を創設したウッドロー・ウィルソン大統領は、連邦準備制度の創成に加担したことについて、「だまされて、私は国を裏切った。」と友人に語っていたそうです。

5.  まとめ

本稿では中央銀行について説明し、米国のFRBと日銀について、そして世界の中央銀行を管理する国際決済銀行(BIS)を紹介しました。

瞬時に何兆円ものマネーが地球を移動する社会において、一国の金融政策を考えることは極めて難しいことです。専門家に委ねざるを得ませんが、国民も無知であってはなりません。以下では国民が知っておくべき日銀の組織や役目についての要約です。

5.1  日銀の組織

  • 日銀は政府が株式の55%をもつ株式会社です。外国人株主もいるようですが非公開です。もしそうなら、外国人株主には有利だが、国民には不利となる政策に誘導されないような注意が必要です。
  • 日銀の職員は公務員ではなく日銀の社員です。日銀法に基づいて活動します。現在の日銀法は1997年に改正され、翌1998年4月1日から施行されました。
  • 日銀の政策は総裁と二名の副総裁、六名の審議委員からなる政策委員会で審議され決定されます。
  • 総裁、副総裁、審議委員は両院の同意を得て内閣が任命します。任期は五年ですが、各人の任用期間をずらしているため、一斉に交代することはありません。また、在任中は本人の意思に反して罷免されることはありません。しかし、国民に甚大な不利益を与えた場合は罷免されるべきです。
  • 政策委員会での決定は会議終了後ただちに公表され、議事の要約は約一か月後に、議事録はおよそ十年後に公表されます。
  • 委員は同じ権利をもちますが、実際には総裁の力が強いと思います。審議委員は個人ですが、総裁は日銀全体をバックにしいます。もちろん日銀も一枚岩ではなく、総裁と副総裁で考え方が違うことはあり得ます。
  • 任期期間中、審議委員は委員の仕事に専念します。他の仕事は一切できません。
  • 日銀の役員は総裁、副総裁のほか、理事、監事、参与がいます。理事と参与は政策委員会の推薦により大蔵大臣が任命し、監事は内閣が任命します。
  • 理事は日銀の業務の執行を担い、監事は日銀の業務を監査します。参与は政策委員会の要請により日銀の重要な運営事項を審議委員に報告します。

5.2  日銀の役目

  • 日銀は中央銀行、すなわち銀行の銀行です。任務は日銀券の発行、市中に出回る日銀券の量の調整、公定歩合の調整、物価の安定などです。ちなみに硬貨の発行は政府が行います。
  • 日銀内には、金融機関が支払い準備金を積む当座預金口座があります。
  • 日銀は、銀行などが保有する国債・株式・債券を買い取り、代価を銀行に払います。これで市中に通貨が供給されます。逆に保有する国債などを銀行に売れば、通貨が日銀に戻ります。これが通貨の制御です。
  • 日銀が政府から国債を買う場合は、資金は日銀から政府に、国債債権は国から日銀に渡されます。

5.3  人と組織の問題

日銀に限らずどの組織においても、組織自体に固有の問題があり、組織を構成する人材についても問題があります。

  • 組織については、官僚的で保守的か否かの問題、迅速な行動力の有無の問題、組織の影響力や利益の拡大を重視するか否かの問題などがあります。
  • 人については、知見の範囲や深さの問題、人間的な資質や性格の問題などが基本的問題です。
  • 日銀総裁は常に批判の対象になります。法律と経済の学識が問われます。また、政府をはじめ他の組織の長との折衝力も問題になります。米国の連邦準備制度理事会の議長は経済学の著名な学者が就任しています。日銀総裁は大蔵省か日銀の出身者が占めます。これはそれぞれの国の事情によることです。
  • 副総裁や理事についても総裁と同様なことが問題になるでしょう。
  • 審議委員の資質も問われます。ある業界の出身では、視野の狭さが問われます。女性枠も問題です。経済学の分野で活躍している女性が少ないこともあり、あえて女性枠を設ける必要性に疑問を呈する人もいます。
  • 審議委員が日銀のイエスマンにならないことも大切です。
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