富士フィルムが買収を狙っているアメリカの「ゼロックス」とは!?


今回の注目記事は、富士フィルムが買収を狙っているアメリカの「ゼロックス」とは!?です。

2018年1月に日本の富士フィルムが、創業から100年以上経過したアメリカの老舗印刷機メーカー「ゼロックス」社を買収すると発表しました。印刷機事業は既に斜陽化していますが、大企業向けのドキュメント事業は安定的な収益を上げることができる事業としてまだまだ健全です。富士フィルムは「ゼロックス」社の買収によって、このドキュメント事業を手に入れることができます。

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アメリカ「ゼロックス」社とは!?

「ゼロックス」社は1906年にアメリカのニューヨーク州ロチェスターで創設された印刷機の製造販売を行う会社です。現在の本社はコネチカット州ノーウォークですが、工場などの主な施設は現在もロチェスター周辺に所在しています。「ゼロックス」社はイギリスのエリザベス2世の御用達の会社となっています。

日本でも書類をコピーすることを「ゼロックス」するということがありますが、この場合の「ゼロックス」は、「ゼロックス」社のことであり、一時は動詞化するほど「ゼロックス」社の印刷機は一世を風靡しました。1975年には3年連続で売り上げ記録を更新し、「ゼロックス」社は絶頂期にありました。

しかし、同じ1975年に独占禁止法違反訴訟の和解条件として、競業他社と特許権のライセンス契約を締結することになりました。その直後から、それまでは100%を維持していた複写機のシェアが急激に下落し4年後にはわずか14%に凋落、その後は再び過去の勢いを取り戻すことはありませんでした。

2018年1月には日本の富士フィルムが「ゼロックス」社を買収することが発表されましたが、そのことに関して各機関が発表したコメントは、100年以上の歴史ある企業が消滅するというノスタルジックなものが中心で、ビジネス界への影響について述べたものはほとんどありませんでした。

多角化に失敗したゼロックス

印刷機事業は当初は儲かる事業でしたが、あっという間に斜陽化していきました。主力事業が斜陽化した時に、「多角化」ができるかどうかがその企業が没落するかしないかを決定します。セロックスは印刷機事業が陰りを見え始めた1970年代に、PARC研究所を設立して多角化を図り、マウスやグラフィックインターファイスなどの研究を始めました。

しかし、そこで開発された技術は、自社が独自に開発したパソコンに導入されましたが、そのパソコンが高すぎて全く売れませんでした。PARC研究所で開発された技術はアップル社のマッキントッシュに生かされてコンピューターに大革命をもたらしましたが、PARC研究所及びゼロックス社はほとんど恩恵を受けることができませんでした。

その結果ゼロックス社の多角化は失敗し、主力である印刷機事業の斜陽化の影響を全面的に被り、ゼロックス社はその後急速に没落していきました。ちなみに、アメリカの写真フィルムの分野で圧倒的なシェアを誇っていた「コダック」社も、同じように多角化に失敗し、あっという間に没落していきました。

それでもゼロックス社が今まで生き残ってきたのは、競走がほとんどない大企業顧客が存在し、そういった企業に対するドキュメント事業は、売上げは少しずつ減少しているとはいえ、粗利益は現在でも40%以上を維持するという非常においしいものですが、このビジネスが存在したためです。

2018年1月に富士フィルムがゼロックス社の買収を発表

2018年1月31日に日本の富士フィルムホールディングスは、アメリカ「ゼロックス」社を買収して子会社化することを発表しました。企業買収は、既存の企業が新規事業に参入するためのブランドやノウハウ、顧客を効率よく獲得するためによく行われます。しかし、コピー機事業は完全に斜陽化していますので、富士フィルムがアメリカのコピー機事業に新規に参入するために「ゼロックス」社を買収するということは考えられません。

富士フィルムが「ゼロックス」社を買収する理由は、競走のほとんどない大企業顧客を対象とした粗利益40%以上と言われているドキュメント事業が欲しいからです。こういったおいしい事業を経営理論では「キャッシュカウ」と言います。これは、じっとしていればミルクのようにキャッシュというミルクをどんどん出してくれる牛という意味です。

富士フィルムも、一時は「写真フィルム」という儲かる主力事業がありましたが、この主力事業があっという間に斜陽化するという事態に直面しました。富士フィルムはその危機をうまく多角化で乗り切りました。現在の富士フィルムは、医薬品や医療機器などのヘルスケア分野を重点分野としてビジネスを展開しています。

富士フィルムも印刷機事業を展開していますが、富士フィルムも印刷機事業は安定して資金を稼ぎ出す「キャッシュカウ」と位置付けており、今回の「ゼロックス」社の買収で、2頭の「キャッシュカウ」を飼うことになります。富士フィルムでは、この2頭の牛が生み出した資金を成長分野であるヘルスケア分野に投下するにしています。

暗礁に乗り上げている買収話

2019年1月の時点で、富士フィルムが「ゼロックス」社を買収すると発表してから1年が経過していますが、未だに買収は実現していません。その理由は、ゼロックスの大株主であるカール・アイカーン氏が強く反対していることと、同じく大株主のダーウィン・ディーソン氏が、買収手続きの差し止めを求めて2018年2月に訴訟を起こしたことです。

アメリカ裁判所は2018年4月にディーソン氏の主張を認めて買収手続きの差し止めを認める判決を出しました。これに対して、富士フィルムは判決を不服として翌5月に上訴しましたが、買収差し止めの判決を受け、ゼロック社では買収推進派のCEOが全員退任、新たに、買収反対派のビセンティン氏らがCEOに就任しました。

ビセンティン氏ら新経営陣は、2018年5月中旬に富士フィルムとの合併契約の破棄を通告しました。これに対して、富士フィルムは契約違反による約1,100億円の損害賠償金を求める訴えをアメリカ連邦地裁に起こしました。

2018年6月25日、ゼロックスの経営陣は富士フィルムに対して2021年に期限を迎える提携契約を更新しないことを通告。自社製品を富士ゼロックスが展開するアジア・太平洋地域で販売すると発表しました。これに対して、富士ゼロックスでは、ゼロックスが担当するアメリカ地域で、自社製品の販売を開始すると応じました。両者の対立は泥仕合の様相を呈しています。

2018年11月にはアメリカ上級裁判所は、富士フィルムの主張を認め、買収手続きの差し止めを解除するとの判決を下しました。ゼロックス側は、既に契約破棄を通告しているので、この判決の影響は全くないと主張しています。一方、富士フィルム側は、2019年中に、買収手続きを継続するか、それとも廃棄するかを最終的に判断するとしています。

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